【コラム】地球温暖化のお話(15)夢の生き物ミドリムシ

石津 顕

皆さんはミドリムシってご存知ですか? 学名はユ―グレナ。
どこかで聞いたことがあるのではないでしょうか。
「ミドリムシ」と言いますが「虫」ではなくワカメやコンブと同じ「藻」の一種です。水田などの淡水に生息し、体長は30~50ミクロンで尻尾のような鞭毛(べんもう)を動かして運動する一方、葉緑体を持っており、植物のように光合成を行って栄養分を体内に蓄えるだけでなく、動物のように細胞を変形させて移動することも出来る植物と動物の両方の性質を備えている大変不思議な生き物です。

大阪府立大名誉教授の中野長久氏によると、光合成による二酸化炭素(CO2)の固定効率は、イネが0.7%、トウモロコシが1.5%に対し、ミドリムシは30%と非常に高いだけでなく、CO2濃度の高い空気を取り込むと固定効率はさらに高くなる優れた性質があります。

固定効率は空気中のCO2を炭素化合物として留めておく機能のことで、固定効率が高いのはCO2を吸収して温暖化を防止する大きな役目を果たすことを示しています。
水中に大量のCO2を送り込めば、それだけ光合成が活発化し、増殖が加速して、収量が増えるという凄さもあります。言い換えると、CO2を取り込んで自分が増殖して、増えたミドリムシがさらに光合成でCO2を炭素化合物に変えてたくさん蓄えるという優れものです。

ミドリムシの特徴はCO2の固定効率だけでなく、水や栄養塩、太陽光とCO2だけで、必須アミノ酸や必須脂肪酸、ビタミン、ミネラルなど人間に必要な59種類の栄養素のほとんどを作り出すことができ、中野氏は乾燥ミドリムシ入りのクッキーを開発しました。

ミドリムシの培養に本腰をいれる企業も現れ、東京のベンチャー企業が大学と連携し、沖縄県・石垣島で屋外大量培養に成功し、ジェット燃料などのバイオ燃料の材料にメドをつけています。(バイオ燃料はガソリン・石炭などの化石燃料と違い、燃焼してCO2を排出しても炭素化合物に再生可能な燃料です)
一方、高い栄養価に着目した大阪の老舗昆布店は、上記のベンチャー企業の協力を受け、自社の塩昆布にミドリムシの栄養成分を溶け込ませた新商品やサプリメント(栄養補助食品)の開発に挑戦するなど、食糧への応用の研究も進んでいます。
このように、ミドリムシはCO2を吸収する温暖化防止だけでなく、バイオ燃料への応用や不足が心配される食糧問題の解決の糸口にもなる重要な生物であることが判ります。今度は水田の水の中でミドリムシを見つけて下さいね。