【コラム】オオムラサキ 37回目 : 2021-3月号

兵庫丹波オオムラサキの会  会長 足立 隆昭

オオムラサキの脱皮と変態について(ホルモン調節)

チョウを始めとして多くの昆虫は、成長や繁殖に良好な季節や不適切な季節を予知するために、最も信頼性の高い信号として日長「(日の出~日の入までの時間)光周期」であり、これに反応する性質を光周性と言い2019年4月に紹介しました。
今回は光周性を持つチョウが季節を感じ脱皮と変態のホルモン調節のメカニズムについて紹介します。
完全変態のオオムラサキは卵から孵化した幼虫は1齢~6齢まで5回の幼虫脱皮と2回の変態脱皮(蛹化と羽化)を経て成虫になります。
幼虫の表皮(外骨格)は硬いキチン質で覆われ成長を妨げるのを幼虫脱皮して大きく成長します。
成長した幼虫は繁殖するための変態脱皮を行い成虫になります。

昆虫の体は頭部、胸部、腹部に分かれ頭部には脳があり、我々と同様に感覚器や神経系を介して、外界の情報を集め、それらを統合し反応系を作動させます。反応系には、神経系を介するものと内分泌系(ホルモン)を介したものがあります。
脱皮・変態は内分泌系の制御によってされています。むろん、脳は介入しています。

チョウの幼虫脱皮、変態脱皮は2種類のホルモン(脱皮ホルモン=エクジソンと幼若ホルモン)、およびそれらホルモン分泌の調節にかかわる2種類の神経ホルモン(前胸腺刺激ホルモンとアラトトロピン)によって調節されていることが解明されています。

具体的には

幼虫の脱皮や蛹化には、アラタ体から分泌される幼若ホルモンと、前胸腺から分泌される脱皮ホルモンがバランスをとりながら協働します。
幼若ホルモンが十分分泌されている状態で脱皮ホルモンが働くと幼虫脱皮が起こります。
幼若ホルモンが不足した状態で脱皮ホルモンが働くと蛹化が起こります。
幼若ホルモンがない状態で脱皮ホルモンが働くと羽化あるいは変態脱皮(不完全変態の昆虫は成虫へ脱皮)が誘導されます。
幼若ホルモンは脳からアラトトロピンが分泌されることにより分泌が促されます。
脱皮ホルモンは脳から前胸腺刺激ホルモンが分泌されることにより分泌が促されます。

各ホルモンの生成場所と働きのまとめ

・幼若ホルモン
アラタ体で合成・分泌されます。
幼虫状態を続けさせようとするホルモンです
幼虫の齢を進めます。
幼若ホルモンがなくなれば蛹となります

・脱皮ホルモン:エクジソン(エクジステロイド)
前胸腺で合成・分泌されます
成虫に導こうとするホルモンです
蛹化・羽化に進めます

・前胸腺刺激ホルモン(PTTH)
脳で作らせるホルモンの一つです
脱皮ホルモン:エクジソンをつくるように前胸腺に命令します
*エクジソンは(ecdysis=脱皮)が語源

・アラトトロピン
脳からアラトトロピンが分泌されることにより幼若ホルモンの分泌が促されます

昆虫の生理分野はまだ計り知れない未知の分野が多く今後の解明が期待される分野です。

参考:幼虫の頭胸部側面図(神経系・内分泌系・循環器系・消化器系)


文責:足立 隆昭

参考文献
チョウの生物学 東京大学出版会
東京農工大学HP
科学なんでも相談室:脱皮と変態の仕組み
ブリタニカ百科事典

※コラムの内容については、こちらから印刷してもご利用いただけます。

PDFファイル(569KB)をダウンロード [/wc_box]