【コラム】オオムラサキ第4回目;3月のコラム
兵庫丹波オオムラサキの会会長 足立隆昭
今年の冬は寒い日が続きました。
熱帯を起源とする昆虫はどのようにしてこの厳しい冬を過ごすのでしょうか。
冬になると昆虫の姿がほとんど見えなくなります。
暖かい地域に移動してしまうのでしょうか?
移動する昆虫、冬に活発に活動する昆虫もいますが、ほとんどの昆虫が休眠という生活様式を取り入れます。
休眠とは生物が自分にとって生活しにくい環境が来るのを予測してその環境になるまでに成長や活動を一時的に停止することです。
オオムラサキは1年1世代の化性(かせい)で、幼虫で冬越し(越冬)します。
春の幼虫(越冬した幼虫)はエノキの葉をたくさん食べて大きな体をつくる役割をします。
秋の幼虫(夏に孵化した新生幼虫)は越冬の役割をします。
昆虫は越冬に2つの戦略を持っています。
・1つは体が凍らない仕組み(非耐凍性)にする。
・もう1つは体が凍っても生存できる仕組み(耐凍性)にする。
オオムラサキは非耐凍性です。
秋の幼虫は1齢から4齢まで生育しますが3齢から初秋の日長の短縮と外気温の低下を感じて休眠態勢を整えはじめ非耐凍性の体をつくります。
その経緯を下記に述べます。
秋の幼虫が孵化したころの日長(日の出~日の入り)が約14時間、最低気温は約22℃(7月中旬値)です。
休眠に入るためエノキの根元におりる11月下旬の日長は約10時間と短くなり、最低気温は約6℃に下がります。
・11月のオオムラサキの体は-10℃に耐えられる体になっています。
・1月、2月には-23℃に耐えられる体になっています。
大きな要因として血液中にトレハロース(糖)を増やしていることが判明しました。
トレハロースの血中濃度は2月の幼虫は11月の幼虫の3倍になっていました。
ちなみに5月の血液中のトレハロースは11月の幼虫の30%と低い値でした。
・また4齢幼虫は、氷核物質(氷のもとになる微粒物)を体に残さないために、褐色化した頃から餌(エノキの葉)は食べません。
参考文献:チョウの生物学 東京大学出版会
耐寒性試験:神戸大学で実施(竹田・長場・足立)

越冬幼虫 上:ゴマダラチョウ 下:オオムラサキ
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