【コラム】地球温暖化のお話(9)生き物たちの異変-1.食物連鎖
石津 顕
「今の地球は、生命の惑星が病んで発熱している状態にもたとえられる。温暖化の影響は、真っ先に自衛手段を持たない動物や植物の暮らしに現れる」 約10年前に産経新聞に地球温暖化で生き物たちが受ける影響について、こんな書き出しで記事が連載されました。当時私は台北に住んでいましたが、台湾が亜熱帯から熱帯に変わったようでした。夏の夕方は毎日のように、熱帯のスコールを思わせる激しい雷鳴と雨に襲われました。
この連載は大変興味ある内容で、毎回楽しみにして、台北でネットで読んでいました。 その記事から、いくつか選んで概略をご紹介します。 まず最初は食物連鎖のお話から。
食物連鎖は一般に,緑色植物⇒草食動物⇒肉食動物へと連なり,肉食動物の死骸は微生物などによって分解され,それがまた植物に吸収されていくというものですが、海の中にも同じように食物連鎖があります。
図は海の食物連鎖を描いたもので、図の左側が現在です。
食物連鎖の最下層に植物プランクトン、その上位に動物プランクトン、さらに小さな魚、最上位に大きな魚が位置し、食物連鎖ピラミッドは主に4段階で構成されていると考えられます。
海洋の植物プランクトンが炭酸同化作用で有機物に取り込む炭素の量は1年間に500億トンと推定されています。食物連鎖の階段を1段上がるごとに、炭素量は約1/10になる(90%がロスになる)と推定されますので、4段の食物連鎖のピラミッドだと、頂上の大型魚全体の炭素量は500億トンの1/1000の5000万トンとなる計算になります。
温暖化で降水量が増えると海の表層水の塩分が薄まって軽くなります。また表層が温められると、やはり海水は軽くなって下に沈み込まなくなり、深層から栄養に富む海水が上がって来る循環が弱まります。その結果、1段目の主要な植物プランクトンの珪藻が、珪素不足で減少し、代わりに緑藻や藍藻といった微小植物プランクトンが最下層に入ります。
植物プランクトンが微小化すると、それを餌とする鞭毛虫や有鐘類などの微小動物プランクトンが増えます。その微小動物プランクトンをオキアミなどの普通の動物プランクトンが食べます。植物プランクトンが微小植物プランクトンに代わり、新たに微小動物プランクトンが割り込むことで、4段ピラミッドが5段に変わってしまうのです。すなわち温暖化が進むと、4段ピラミッドが5段に変わる可能性があります(図の右側)。
これは大変マズイことなのです。5段のピラミッドに変わると、ロスが1段階増えるため、世界の海にいる大型魚の炭素量は1/10000の500万トンに減少します。温暖化が進むと、人類が利用できる魚の量が現在の10分の1に減る可能性を意味しているのです。温暖化がこんなところにも影響して来るとは驚きですね。