【コラム】地球温暖化(10)生き物たちの異変-2
石津 顕
前回に続き産経新聞連載の生き物たちの異変から一部をご紹介します。
「日本の気候帯は1年に約5キロの速度で北に向かって移動している」 東京と大阪の平均気温差と距離と10年当たりの昇温値から算出したスピードだそうです。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)のメンバーである西岡秀三さんの話です。
温暖化で動物や昆虫なら移動できますが、樹木の場合は不可能です。氷河期に広がったブナ林は、西日本では約1000メートル以上の山地に残っていますが、この群落も急速な温暖化で山頂へと追い詰められることになります。高い山が少ない西日本のブナの将来には絶滅の運命が待っています。
高温障害は、国産米で深刻な現実問題となっています。九州では2003年以降、水稲の作柄と品質の低下が続いています。稲穂が出た後の気温が高すぎるために実りが悪いのです。病気や虫害の多発も影響しています。
ブドウなどの果樹への影響も出始めています。果樹は栽培に適した気温の幅が狭いので温暖化の影響を受けやすいのです。一つの例として温州ミカンのお話しを紹介します。
愛媛が地中海になったと言われるように、気候の影響で温州ミカンには「浮皮(うきかわ)」が起きやすくなり、味も落ちたと言われています。浮皮は、果皮が太って実と皮の間に空気が入り、ぶかぶかになる現象で、熟してからの高温多雨が引き起こすのです。
愛媛県立ミカン研究所では果肉が赤い地中海のシチリア島特産のブラッドオレンジのタロッコに注目して試験栽培し、愛媛産のタロッコを本場に持ち込んだところ、本場産より甘かったと現地を驚かせたそうです。
価格低迷が続く温州ミカン一辺倒の経営を見直し、高級柑橘を中心とした安定経営を実現するためにも「温暖化は新たなビジネスチャンス」と強調しています。
このまま気温が上昇していけば、温州ミカンは2060年代には本場の愛媛、和歌山、佐賀などでは生産が難しくなり、代わりに日本海側や東北地方の南部で栽培できるようになるという見通しだそうです。
温州ミカンの北上の例として、新潟県佐渡市で温州ミカンを出荷しています。出荷可能な経済栽培の北限は、これまで神奈川県や千葉県とされていましたが、佐渡島では数年前から農家が自家用に栽培していたのです。島では「北限のミカン」として名産化を目指しています。
福島県広野町でも温州ミカンを収穫し、ジャムや蒸しパンなどの加工品を作っています。「温州ミカンの北上」は、すでに始まっているのです。
(図の出展元 https://www.wwf.or.jp/activities/basicinfo/286.html)