【コラム】地球温暖化のお話(38)オオカミ

石津 顕

ここで一休みして話題を変えましょう。
皆さんはオオカミと聞くとどんなイメージをお持ちですか? 赤ずきんちゃん、三匹の子ブタなどのお話からオオカミは怖い、悪の代表みたいなイメージでしょうか。突然オオカミのお話になって驚かれたと思いますが、オオカミが自然環境と深い関係があることをご存じでしょうか?
日本では、1905年(明治38年)に奈良県で捕獲されたのが最後で、オオカミは絶滅したと言われています。アメリカでも1926年に絶滅したそうです。
アメリカにある四国の約半分の広さのイエロストーン国立公園では、オオカミがいなくなったことで「エルク」と呼ばれる大型のシカが大繁殖してポプラなどの若芽を食べ尽くしてしまって土地が荒廃し、生態系が大きく乱れたのです。

事態を深刻に受け止めた行政は、慎重に検討し、家畜や人を襲うという反対を押し切って、1995年にカナダから取り寄せた14頭のオオカミを公園に放ちました。放たれたオオカミは順調に増え続け、追加導入もあってアメリカ各地に広がりました。それまでオオカミ不在で頂点捕食者となっていたコヨーテが、増えたオオカミに追いやられたため、コヨーテの餌となっていたネズミやリスなどの小動物は激減を免れました。
シカの食害が無くなり、驚くことに河川の蛇行が減って地形まで変わり、生態系が以前のように復元され、野には緑が、川には豊かな水が戻り、ポプラの葉や皮を食べて生活するビーバーも、失われていた棲み家を取り戻したり、カワウソなどの小型の哺乳類が戻ってきたりで、豊かな自然が復活したとのことです。

日本でもシカやイノシシによる農作物の食害が増えています。特に過剰に繁殖したシカによる被害は深刻で、農林業だけでなく、全国各地で、植生破壊、野生動物種の減少絶滅、土砂流失崩壊など、自然生態系の被害が年々激しさを増しており、最近では被害の奥地化が進んでいます。
このままでは、日本の森林は荒廃の一途をたどります。

そんな中で、オオカミを再導入したいとの声が出ています。
(日本オオカミ協会として活動)  日本にはかつて、本州以南にニホンオオカミが、北海道、択捉島、国後島にはエゾオオカミが生息していました。
図は江戸時代の鳥獣分布図で日本各地にオオカミ、ヤマイヌ(オオカミと同一と言われている)が生息していたと記録されています。
日本オオカミ協会(https://japan-wolf.org/)が復活を望む「オオカミ」は、北半球に広く分布するハイイロオオカミで、ニホンオオカミ、エゾオオカミともハイイロオオカミの亜種です。そのため、ハイイロオオカミを導入しても、日本固有種の駆逐ではなく、失敗したマングースのような外来種の導入とは意味が違うと主張しています。
ちょっと怖いイメージのオオカミですが、ハイイロオオカミの導入が自然の復活につながり、生物多様性にも反しないのであれば、とても興味をそそられ、ロマンを感じさせます。
有名なシートン動物記の「狼王ロボ」。子どもの頃に胸を躍らせて読んだ名作・・・胸を打つ哀しみの終章。遠い日の記憶がなつかしくよみがえります。

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