【コラム】植物は好奇心の宝庫(その⑯)驚くべき合成技術
藤原和夫
動物は食物を求めて動き回るが、植物は必要な食物(養分)を自分で作り出すことができるから動き回る必要がない。つまり、植物は動き回れないのではなくて、動き回る必要が無いから1カ所にじっとしておれる、と考えると植物はかなりの高等生物と言えるかも知れません。
植物が有機化合物を合成する働きとして有名な炭酸同化作用(光合成)。
植物は1枚の葉っぱが空気中の炭酸ガスと水を原料として、太陽光のもとにデンプンやブドウ糖を作り出しますが、炭酸ガスと水を原料としたデンプン工場というのは夢の夢で、人間には未だ不可能です。
動物は、植物が作り上げたデンプンを食べ、ブドウ糖を取り出してエネルギーとして利用したあと、炭酸ガスと水を排出する。つまり、植物が合成した部分を動物が吸収して、原料部分を自然界に戻していると言うことになりますが、何か滑稽な感じがしないでもありません。
次に、タンパク質。
植物は窒素を原料の一つとしてアミノ酸を作り出していますが、空気中の窒素の形では如何に植物といえども体内に吸収できません。この為、窒素を吸収し易いアンモニアイオンに変換した上で根から体内に吸収してアミノ酸を生産しています。 このアミノ酸が植物性タンパク質のもととなりますが、動物は植物性タンパク質を食べることによって動物性タンパク質を作り出していますので、全てのタンパク質が植物の合成技術に依存していると言うことになります。
脂質と言えば各種のオイルが頭に浮かびますが、ごま油、オリーブオイルなど多くが植物由来です。
他にも人類にとって必須の様々な栄養分が植物の合成技術によって生み出されていますから、植物の技術力に感謝ですが、植物がいなければ動物は生きていけないようです。
医学の分野では、多能性幹細胞 “iPS細胞” の多分野での利用が期待されていますが、植物の世界では挿し木、枝の一部を切り離す取り木など、体の一部から全体を再生するのが当たり前の如く実践されています。 考えてみたら驚くべき人類を凌ぐ技術力です。
ただ、この能力の秘密を明かして貰えないのが悩ましいところ。
下の写真は、ニューカレドニア原産のIxora margaretae と言う植物の葉挿しです。葉挿しは多肉植物では一般的な増殖法の1つですが、この植物の場合、葉挿し後1年以上経過しているにも拘わらず一向に変化無くご覧の通り。理由は未だ解明されていない様です。
