【コラム】植物は好奇心の宝庫(その⑲)植物の伝達システム

藤原和夫

1月7日の人日(じんじつ)の節句に七草粥を召し上がる方もいらっしゃるのでは?
「春の七草」の七草の効能は、
*せり:香りがよく、食欲増進に
*なずな:江戸時代にはポピュラーな食材で、別称ペンペン草
*ごぎょう:草餅の元祖。風邪予防に使われた
*はこべら:ビタミンAが豊富で、目に良く腹痛の薬にも
*ほとけのざ:別称はタビラコ。タンポポに似ていて、食物繊維が豊富
*すずな(カブ):ビタミンが豊富
*すずしろ(ダイコン):消化を助け、風邪の予防にも
と言うことのようですね。

七草の効能はともかく、今回は、“植物の伝達システム”について。

その1:オジギソウ

触れられたり、熱を感じたりすることによって小葉が先端から1対ずつ順番に閉じ、葉全体がやや下向きに垂れ下がるオジギソウ。 このメカニズムは、茎の特定部位が刺激されると、植物体の中にカリウムイオンを含む化学物質が放出され、このイオンが細胞内の液胞から水を排出させることによって細胞の圧が失われて収縮、異なる部位間での圧の差によって葉が閉じ葉柄が収縮する、ということだそうです。

その2:舞萩

25℃以上の高温下で交響曲などを高音で聞かせると踊り出す舞萩。基本的メカニズムはオジギソウと似ているようですが、良く判っていません。舞萩の花の写真に続く写真を順に見て頂き、その動きの一端でもご理解頂ければ幸甚です。

その3:植物間のコミュニケーション

南アフリカ共和国北東部にあるトランスバールの柵で囲まれた放牧場で飼育されていた、アカシアを餌にしているクーズーというレイヨウの仲間。 1981年、放牧場の中に青々としたアカシアが潤沢にあったにも拘わらず、飢え死にした数頭のクーズーが発見されました。このクーズーを解剖すると、胃の中に残されたアカシアの葉には大量のタンニンが含まれていて、消化されていないことが判りました。 植物は食害から防衛するために、動物に傷害された部位に短時間のうちにタンニンなどを放出し、動物もこの点は承知していますので、数十分毎に食する株を替える、つまり、葉にタンニンを感じ始めれば別の株に移ると言うことですが、なぜ胃の中の葉に大量のタンニンが残っていたのか?
その後の調査で、食害にあったアカシアは、自身の葉に大量のタンニンを放出するだけでなく、この食害情報を放牧場内にある他のアカシアに伝達していたことが判ったと言うことです。つまり、放牧場内のアカシアの全てがこの食害情報を受けて、葉先にタンニンを放出したため、クーズーは食べるものがなくなり餓死した、と言うことです。 この情報伝達は負傷した葉が放出する揮発性物質によると推定されていますが、揮発性物質の中で周囲の植物に影響を与える代表格がエチレンですから、クーズーを死に追いやったのもエチレンかも知れません。

その4:バナナの熟成促進

青いバナナの横にリンゴを置いておくと、リンゴが発するエチレンガスによって
バナナの熟成が早められます。  植物が分泌する気体ホルモンであるエチレンが果実の成熟促進という役割を果たす。面白くないですか?

その5:植物・昆虫間のコミュニケーション

トウモロコシに群がる毛虫を退治するために、トウモロコシがスズメバチを強力に誘引するカクテルを放出してスズメバチを呼び込み、毛虫はスズメバチに寄生されて殺される、という嘘のような本当の話。