【コラム】植物は好奇心の宝庫(その⑰)激辛唐辛子

藤原和夫

辛味のある品種を“唐辛子”、辛味のない品種を“ししとう”と呼ぶとのことですが、つい最近まで、単に辛い唐辛子と辛くない唐辛子があるといった程度の理解で、“ししとう”はシシトウガラシの略語だろう、くらいに考えていました。
どちらも中南米原産のナス科トウガラシ属の野菜で、明治以前に日本に伝わったものの、どういう訳か、辛くない“ししとう”が一般に広まるのは第二次世界大戦以降と言うことです。

前置きは兎も角、元来辛いもの好きでしたが、これぞという激辛唐辛子との最初の出会いは、タイのバンコックでした。 小皿に醤油の様な液体の中に浸された小さく刻まれた緑色の唐辛子。料理と一緒に食べるのですが衝撃的な辛さで、これが東洋一では、と思えるほどの激辛唐辛子、“プリッキーヌー”との出会い。(プリッキーヌーはタイ料理トムヤムクンに使われます。)
これが世界一辛い唐辛子の栽培と利用に興味を持つきっかけとなって現在に至っています。

唐辛子の辛み成分はカプサイシンですが、この辛さを数値で表したのがスコヴィル値というもので、何倍の水で薄めれば辛さを感じなくなるかを示します。
例えば、キャロライナ・リーパーと言う唐辛子の平均的なスコヴィル値は160万程度ですから、この唐辛子の場合、1gを1600kgの水で薄めて初めて辛さを感じなくなると言うことになります。

代表的な唐辛子・ししとうのスコヴィル値をリストアップしますと、
• ピーマン、ししとう…0スコヴィル
• タバスコ…1,500~2,500スコヴィル
• ハバネロ…25万~45万スコヴィル
• ブート・ジョロキア…100万スコヴィル
• トリニダード・スコーピオン・ブッチ・テイラー…146万スコヴィル
• キャロライナ・リーパー…160万スコヴィル
キャロライナ・リーパーは現時点でギネス認定の世界一辛い唐辛子とされていますが、その辛さはタバスコの約1000倍、と言うことになります。

我が家のキャロライナ・リーパー

ただ、これを上回る激辛唐辛子として、ドラゴンズ・ブレス(248万スコヴィル)とペッパーX(318万スコヴィル、実質的に激辛世界一)の2種が現われ、近々ギネス認定世界一が書き換えられる見込みですが、この2種も我が家で収穫できるようになってきました。

ところが、これらの激辛唐辛子、そのまま口に入れるのは余りにも危険です。
ペッパーXを開発したエド・カリー氏は、医療分野での利用を目的にしているそうですが、何とか日常生活の中で利用できる方法は無いかと試行錯誤の結果 辿り着いたのが、カプサイシンをポーランド製ウォッカ”SPIRYTUS”で抽出し、これをスポイトボトルに入れて少量ずつ使用するという方法。 鍋料理の味付けポン酢や焼きそば、スパゲッティなどに数滴垂らして、ほどよい辛味を楽しんでいます。