【コラム】地球温暖化のお話(61)食べ物とテクノロジー まず半導体
石津 顕
このコラム、しばらく鳥や魚などの生き物のお話をしてきましたが、このあたりで、少し方向を変えて、テクノロジーの話をします。
私たちが毎日必ず口にする食べ物に、電子工学、機械工学、生物工学、などの先端技術が使われていることをご存知でしょうか?
増え続ける世界人口、水資源の枯渇、気候変動、減っていく農林魚業労働力など、さまざまな理由から食糧生産は大変さを増しています。そのため食糧の生産・加工にテクノロジーの活用が進んでいます。それらの一部を少しずつお話します。
まず最初は私の専門研究テーマであった半導体からお話をしたいと思います。
私たちの生活のあらゆる部分で使われている電子回路(集積回路)。テレビ、スマートフォン、パソコンはもちろん、ほとんどの家庭電器製品から産業機器の制御に電子回路は使われています。野菜を工場で作るのもその一例です。電子回路の中心は半導体で、産業の米とも言われてきました。
半導体は導体(金属)、絶縁体の中間の性質で、温度が上がると電流が流れやすく、温度が下がると電流が流れにくい性質を持つ材料です。金属はその逆です。
皆さんは学校の理科、化学で周期律表というのを習われたと思います。周期律表の第4属にあるシリコン、ゲルマニウムなどが半導体です。中でもシリコン(Si)は地球上で酸素についで多い元素です。
そして電子回路(集積回路)のほとんどに使われているのもシリコンです。
シリコンの原子構造は図にあるように、原子核のまわりに電子が軌道を描いて回っていて、その一番外側の軌道に4個の電子があります(価電子と言います)。そして、となりの原子同志と4個の電子が手をつなぎ合って、シリコンの固体ができています。これを共有結合と言います。
集積回路に使われるシリコンの純度は99.999999999%で9が11個でイレブンーナインと言われる高純度に精製されたものが使われます。
高純度のシリコンにわずかの不純物を加えることによって、電流が流れ、電子回路の働きをする素子ができます。不純物として、外側の軌道に電子が3個のホウ素(B)を加えるとP型シリコン、外側の軌道に電子が5個あるリン(P)を加えるとN型シリコンになります。
これらのP型とN型のシリコンの薄い層を重ねて接続すると、PN接合と言って2本足のダイオード。電圧を加えるとP型側からN型側に電流が流れます。またこの組み合わせをNPN、PNPと重ねて接合すると3本足のトランジスタになります。
私たちの身の周りにあるパソコン、スマートフォン、電気製品、自動車、コンピュータ、その他あらゆる機械に組み込まれている電子回路は、超微細加工したダイオード、トランジスタの組み合わせなのです。電子回路の応用は後で少しずつお話します。
今回のコラムは少し難しい話になりました。少し一休みして、私の好きな短歌を一つ。
幾山河 越え去りゆかば寂しさの 果てなむ國ぞ今日も旅ゆく 若山牧水
酒と旅を愛した放浪の歌人若山牧水。岡山と広島の県境の峠の茶屋で泊まった時の歌です。
歌碑が県境の(岡山県哲西町・広島県東城町)二本松公園にひっそりと建てられていて、通りすがりの旅人をそっと慰めてくれます。遠い日の思い出がよみがえります。