【コラム】地球温暖化のお話(65)猪名川のアユ
石津 顕
NHK「ダーウィンが来た」で先日アユの生態のお話がありました。アユはキュウリウオ科に分類されていますが、背ビレの後ろについた脂鰭(アブラビレ)を持つなどの特徴がサケ科に類似しています。また孵化した後、川から海へ下って行くのも、以前お話したサケ科のヤマメ・アマゴに似ています。
アユは河口に近い場所で孵化して河口へ、春に上流へ遡上して上流で夏場に成長し、河口に近い場所で産卵・孵化というサイクルの生態ですが、下図にある長良川の例のように、中上流域の水温が高いと下る時期が遅れる、春に遡上が遅くなり成長する魚が減るという温暖化の影響が心配されるとのことです。
私たちの住む猪名川のアユは温暖化の影響をどのように受けているのでしょうか?
猪名川のアユは天然アユ2種類と放流アユ、あわせて3種類のアユが棲むとのことで、これも面白いですね。2種類の天然アユとは大阪湾から遡上してくるアユと、一庫ダム・知明湖を海の代わりにして繁殖しているダム湖産アユです。
一方で、放流アユの産地は不明ですが、琵琶湖産の放流アユは縄張り意識が強く、その習性を利用した友釣りに向いていると昔から言われてきましたが、最近は全国的に、人口孵化の稚アユの方が増えているようです。
余談ですが、以前お話したヤマメ・アマゴは全国で無秩序に放流されたため、ヤマメ・アマゴの棲み分けが乱れていて、交雑種もいるそうです。アユの放流も外来種を放流することになりますが、はたしてどうなんでしょうか。
大阪湾から遡上するアユについては、産卵場所とされる尼崎の園田競馬場近くの藻川で川底を掘り返してやわらかくし、アユが産卵・ふ化しやすくする活動が行われています。藻川は流域の人たちの努力で水質が改善されており、アユの産卵場所になっているのはうれしいことですね。猪名川の汚れと住民生活の関係がアユの生態にも関連し、さらにそれに地球温暖化の影響が加わっているのでしょうね。
以前にお話した野鳥や野生動物の生態調査はGPSやセンサーを取り付けて調べられるし、魚も大型ならGPSを利用できるかも知れませんが、アユは年魚、1年で一生を終るので、GPS調査は無理でしょうね。
私は猪名川上流広域ゴミ処理施設環境保全委員という長い名前の委員を務めています。アユに限らず猪名川流域に棲息する生物と周辺地域の人の生活、社会環境などとの関わりを考察すると「生物地理学」とでも言うのでしょうか、研究分野の一つですね。
昔は一面の笹原だった猪名川流域、百人一首にもある和歌を一首。
大弐三位 (紫式部の娘)