【コラム】地球温暖化のお話(60)ホトトギス
石津 顕
「ホトトギス鳴きつる方をながむれば ただ有明の月ぞ残れる」
名歌に歌われているホトトギス。夜が明けて、声が聞こえた時には姿が見えず、有明の月だけが低い空に残っています。
春は曙、やうやう白くなりゆく山際すこしあかりて、紫だちたる雲の細くたなびきたる。
枕草子の冒頭のような風景が思い浮かびます。
ホトトギスの第一声(初音)を聴くのは非常に典雅なこととされ、山の中で朝一番に鳴くホトトギスの声を何とか聴こうと夜を明かして待つこともよく行われていたとのことです。
そのホトトギス、変わった行動をすると書きましたが、それは托卵という行動です。言葉の通り、卵を他人?(他鳥)の巣に産み付けて、育ててもらうのです。
実用語辞典を見ると、托卵は「実の親ではない者に(自分の実子であると信じ込ませて)子育てを行わせること、托卵はもともとはカッコウやホトトギスなどに見られる習性を指す語」とあります。
ホトトギス(カッコウ目、カッコウ科)が産み付ける巣はウグイスです。卵は写真のように色がそっくりで(左3個ウグイス、右1個ホトトギス)。何も知らないウグイスは自分の卵より大きいホトトギスの卵を温め、ヒナが孵ると自分の子よりはるかに大きいホトトギスのヒナに、けなげに、せっせとエサを運んで与えます。
大きいホトトギスのヒナは、我先にエサをもらって早く大きくなって、育ての親ウグイスより大きくなるのです。
さらに驚くことがあります。いつかNHKの「ダーウィンが来た」で見たのですが、大きく育ったホトトギスのヒナは巣の中で、邪魔になったウグイスのヒナを外へ落とすのです。
托卵されたウグイスは、騙されて他人の子どもを育てた上に、自分の子どもを殺されて、子孫を残すことができません。これは許されないと強い怒りをおぼえました。
托卵をするのはホトトギスだけでなく、カッコウも托卵します。托卵される鳥はウグイスのほかオオヨシキリ、ホオジロ、モズなどです。基本的に卵を託す相手は、同種または近縁種が選ばれるそうで、種間托卵と言いますが、種内托卵といって、ダチョウ、ムクドリなどは同種の他の鳥の巣に托卵することもあるとのことです。
下の写真はオオヨシキリの親がカッコウのヒナにエサを与えるところです。小さな育ての親と大きいヒナ、気づいていない育ての親が気の毒です。
判った時はやはり修羅場、托卵された鳥の対抗策として、托卵によるヒナを殺す、あるいは巣ごと放棄して育てない、自分のヒナを見分けて、托卵されたヒナを排除するといった進化を遂げた鳥もあるそうです。
托卵は鳥だけでなく、魚類や爬虫類にもあるそうですから、生き物の世界にも、生き抜くために、ずるい方法で種を維持することがあるのは哀しいですね。
人間の世界にも托卵女子という言葉があるそうです。今回のコラムのアイキャッチ(見出し画像)は、托卵されたニコニコ顔のお父さんの子育てにしましたが、托卵女子はマンガの世界のお話でしょうね(苦笑)